木目込み人形とは -管理方法等ご紹介-
■木目込み人形とは
木目込み人形とは、桐塑のボディ(桐のおがくずと糊を練り固め乾燥させたもの)に筋彫りをし、その溝に金らんなどの織物をヘラや目打ちなどで木目込んで衣装のように着せ付けた人形のことです。
江戸時代中期に京都の上賀茂神社に仕える雑掌高橋忠重が、奉納箱をつくる柳の木の残片で木彫の小さな人形を作り溝を付けて、そこに神官の衣装の残りの布を挟んで着せ付けたのが始まりだと言われています。
現在では桐塑のボディの他に低発泡性のウレタン樹脂を成形したボディも使用されています。
戦後木目込み人形を作る手芸が全国的に流行し、弊社は木目込み人形材料の問屋として500種類以上の人形や金らんや友禅、ちりめんなどの国産の布地を数千点取り揃えています。
人形のボディ表面に布地を貼り付けるだけなので衣装のカスタマイズが容易にでき、世界に一つのオリジナルお雛様を求めてカスタマイズをご希望されるお客様が多くいらっしゃいます。
■木目込み雛人形の魅力とは
木目込み人形のお雛様は、ボディを型で抜くするため単純なラインを組み合わせてデフォルメされたデザインが多く、各メーカーの作家独特の芸術性や個性があり上品なもの多いです。
華やかな印象の衣裳着人形と比べると丸みがありコンパクトで可愛らしい人形が多く、最近では手のひらサイズの人形も増えています。
飾るスペースが少ない近年の住宅事情に合うように幅50cm以内で飾れるお雛様のラインナップも増え、洋間にマッチするおしゃれで落ち着いたデザインが好評を頂いています。
固いボディに布を貼り付けているので長年飾っても型くずれの心配が少なくお手入れも楽です。
頭(顔のこと)は衣装着のひな人形のような「入り目(ガラス玉の目)」を使用した華やかな印象のものは少なく、細い面相筆で目を書き入れた「書目」が主流です。その落ち着いた上品で優しい表情が木目込み雛人形の最大の魅力です。
■木目込み人形のお手入れ方法
人形はとてもデリケートな置物ですが、衣裳を幾重にも着せ付けた衣裳着人形に比べると、木目込み人形の取り扱いはとても楽です。
固いボディに布地は貼り付いているので、手に取って動かしても衣装が着崩れる心配はありません。
頭(顔)は汚したり傷付けたりすると修理できないことが多いので素手では触らないように気をつけ、お子様の手が届かない所に飾るようにしましょう。
もし頭に汚れが付いてしまった場合は、水に塗らして固~く固~く絞ったガーゼなどで軽くはたいてみてください。基本的には頭を水に塗らしてはいけません。
日常のお手入れはホコリをはらう程度で十分です。
飾る場所で注意しなくてはいけないのが日差しと湿気です。人形の衣装は染色した糸で織られていますので紫外線に当たると色褪せします。また湿気が多いと人形にホコリが付着しやすくなりカビや虫食いの原因となります。窓際などの直射日光が当たる場所は避け、風通しの良いところに飾るようにしてください。
■人形の保管方法
湿気の少ない晴れた日にお人形のお手入れをしてからしまいましょう。手袋をして作業することをお奨めします。
まずはお人形の持ち物や男雛の冠に付いているエイなどを外し、着物に付いているホコリを丁寧にはらいます。
購入時に頭に付いていた半紙などの紙を元通りに頭に軽く巻きつけて端をねじって止めます。もし紙をなくしてしまったらティッシュなどを細く折りたたんで顔に巻き付け後ろの方でテープで止めてください。
テープで止める場合は髪の毛に付かないように十分注意してください。髪は一度乱れてしまうと素人では直せません。
人形を箱に入れる際は、人形同士がぶつからないように丁寧に配置し、動かないように隙間を緩衝材で埋めます。(殆どの場合、購入時に緩衝材が入っていると思います)
飾り方の冊子なども忘れずに箱にしまい、最後に人形用の防虫剤を入れます。防虫剤は必ず「人形用」を使用してください。また量を多く入れればよいというものではありません。使い方を誤るとブラスチックの部品や、布地の金彩と化学反応を起こし変形や変色してしまう場合がありますので、お使いになる人形用防虫剤の用法をよくお読みください。
箱に詰め終えたら風通しがよく日の当たらない場所に保管してください。
■初節句の祝い方
赤ちゃんが生まれて初めて迎える節句のことを「初節句」と呼びます。
女の子の「桃の節句」と呼ばれる3月3日、男の子の「端午の節句」と呼ばれる5月5日に、災いや病気からお子様を守ってくれるようにと願いを込め、健やかなる成長を祈ってお祝いする大事な日です。。
女の子の「桃の節句」はひな祭りという名のとおり雛人形を、男の子の「端午の節句」は兜や武者人形、鯉のぼりを飾ってお祝いします。最近はお子様の名前を刺繍した「名前旗」を飾るのも流行っているようです。お人形を飾るのは約1カ月前を目安に遅くとも2週間前までには飾りましょう。
節句の日当日は祖父母や親しい方を招待してお祝いの膳を囲むのが一般的です。(もちろんご両親だけでも構いません。)
赤ちゃんの衣装に決まりはありませんが、女の子には可愛らしい被布や着物を、男には凛々しい陣羽織を用意してあげると写真撮影も盛り上がります。
お食事はお祝いの席ならではの縁起のよいお料理を頂きます。手作りはもちろん、お祝い膳の出前や外食を利用してママの負担を減らすのもよいですね。えびやはまぐり、鯛、よもぎ、など縁起がよいとされる食材を使った料理が定番です。またちらし寿司や赤飯、ひなあられや菱餅、白酒などなどで食卓を彩るとより豪華な雰囲気になります。端午の節句は柏餅やちまきを用意するのもいいでしょう。
■木目込み雛人形の製造工程
1:原型作り
粘土または彫刻で人形の原型をつくります。出来上がった原型を木枠に入れ樹脂などを流し込んで、前後に分けて型取りした「かま」と呼ばれる型を作ります。(人形によっては複数に分かれる複雑な型になる場合もあります。)
2:かま詰め・ヌキ
桐粉にしょうふのりを混ぜて作った桐塑(とうそ)を前後の「かま」にそれぞれ詰め、それを合わせると胴体が出来ます。
乾燥室で2~3日、胴体の中まで十分に乾燥させます。
3:生地ごしらえ
よく乾燥させた後、生地表面のでこぼこをやすりで滑らかにし、ひび割れがあればは竹べらを使って桐塑で埋めたりして綺麗な胴体に仕上げます。この作業を「生地ごしらえ」または「彫塑(ちょうそ)」といいます。
4:筋彫り
胴体に布を木目込んでいくための筋彫りをします。ルーターや彫刻刀を使って一定の巾と深さになるように丁寧に彫ります。これで胴体は完成です。
5:木目込み
寒梅粉(かんばいこ)を練った糊を筋に入れ、金らんや友禅などの布地をヘラで押し込んでいきます。
この「木目込み」の部分が木目込み人形の手芸です。布地のコーディネート次第で人形の印象がガラリと変わります。
6:頭や小道具の取付け
職人が仕上げた頭や手などを胴体に取り付けます。
髪をブラシで整え、全体の確認をして完成です。